下沼駅

消えゆくダルマ駅:北海道

名寄から稚内に向かう宗谷本線の列車が下沼駅に近づくと、ちょっと情けない表情をした、縫い傷が2つある顔が見えてくる。

駅舎の車体側面にも同じ顔があるが(口が見えなくなっているけど)、眠そうな目は逸らされてしまった

左下に全身像が描かれているが、これは幌延町が制作した当駅のイメージキャラクター「ぬまひきょん」だという。

宗谷本線にある5つのダルマ駅のうち4つは、新しい金属板で外壁全体が覆われているのだが、なぜか下沼駅だけは、水色とベージュのツートンカラーがそのまま残っている。錆が目立ち始めていて、ほかの4駅よりも荒廃感を感じてしまう。

 

基本情報

□駅名  下沼(しもぬま)
□路線  JR北海道 宗谷本線
□所在地 北海道幌延町下沼
□マップ

□撮影年月 2025年9月

 

下沼駅は、宗谷本線の幌延駅と豊富駅の間にあり、西側、海岸までの約7kmにはサロベツ原野が広がっている。ペンケ沼、パンケ沼という2つの大きな沼があり、パンケ(下流にある)沼を意訳して下沼という地名と駅名になった。

当駅からパンケ沼展望台までは2km、幌延ビジターセンターまでは6kmあり、さすがに駅を使って徒歩で観光する人はいないだろう。そもそも昼間は上り下りとも11時前後の1本しか列車がないし。

地図を見ても、駅の周辺に建物がまとまった場所はあまりないようだ。これでは駅の利用者は期待できないだろう。

線路の近くを国道40号が並行して走っているが、駅の入口は国道と反対側だ。駅へ向かう道の曲がり角にも目印となるものがない。

実は、写真中央の案内板に「下沼駅」と書いてあるのだが、もうまったく見えない。そもそも駅の場所を知らない人が利用するとは思えないので、それでかまわないだろうが
角を曲がって200mほどで駅に着く。もちろん、周囲には何もない
名寄方。こちらの車体前後面は顔ではなく、「ぬまひきょん」全身が描かれている
室内には写真や絵などいろいろなものが所狭しと張られている。正面右のドアはトイレの跡だろう。傘は置き傘? 忘れ物?
雪かき道具もある。宗谷本線の名寄駅-稚内駅間で利用客が少ない駅は、自治体による維持管理に移行していて、当駅も該当する
室内で一番目を惹くのがこの写真。車両の形、4両という(現在からしてみると)長い編成であること、カラー写真であることなどから、1970~1980年代あたりではないかと思われる

現状は1日の乗降客がほぼゼロに近い下沼駅だが、室内に飾られた品々を見ると、人々から忘れ去られたわけではない、ということがはっきりと感じられた。

 

※「ダルマ駅」とは、使わなくなった貨車(有蓋車、冷蔵車、車掌車など)を改造した駅舎の呼び名の一つ。車輪や連結器などを取り外し車体だけになった様子が、手足のない置物のだるまに似ていることが由来。

 

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