
消えゆくダルマ駅:北海道
美留和(びるわ)駅は、数あるダルマ駅のなかで最も地元に愛されているかもしれない。きれいに塗装され、定期的な清掃も行われている。近くに住む人は「駅の廃止も検討されているようだけど、なくなってほしくない」と話す。
□駅名 美留和(びるわ)
□路線 JR北海道 釧網線
□所在地 北海道弟子屈町美留和
□マップ
□撮影年月 2025年11月
美留和駅の開業は1930年(昭和5年)。釧路と網走を結ぶ釧網本線(せんもうほんせん)はその翌年に全通した。
摩周駅(旧駅名弟子屈:てしかが)と川湯温泉駅の間にあり、周辺には摩周湖や屈斜路湖、硫黄山(アドサヌプリ)や川湯温泉という北海道有数の観光地があるが、観光客が美留和駅を利用することはほとんどないだろう。
地元の人によると、美留和の地名は、清い水が流れるところを意味するアイヌ語「ベルワンペッ」に由来するという(そのほかの説もある)。北海道らしいいい駅名だと思う。

壁面のほのぼのとした絵は、6年前に美留和小学校の児童たちが描いたものだ。それだけではなく、半年に1回程度、美留和小学校の児童は「地域の皆さんが喜んで下さることを励みに」駅舎や地域の清掃をしているのだ。


ところがあるとき(Wikipediaによれば2015年)、水色とベージュのツートーンという味気のないものに塗り直されてしまった。地元の人が何度もJRにかけあった結果、ようやく2019年に「美留和駅開業90周年」という名目で塗り直しが認められ、現在のペイントになったそうだ。

タレントの市川紗椰が番組撮影で美留和駅を訪れた時に、ノートにも書き込みをしたらしい。番組内では当駅を「ヨ号駅」と言っていたそうだ(「ヨ」は車掌車の車両記号)。





美留和駅はJR北海道が廃止検討の候補にしているし、そもそも釧網本線自体の存続も安泰ではない。でも、これだけ地元の人や子どもたちに手をかけてもらっている駅があることは、少なくとも記憶に残しておきたい。
※「ダルマ駅」とは、使わなくなった貨車(有蓋車、冷蔵車、車掌車など)を改造した駅舎の呼び名の一つ。車輪や連結器などを取り外し車体だけになった様子が、手足のない置物のだるまに似ていることが由来。

