筬島駅

消えゆくダルマ駅:北海道

稚内に向かう宗谷本線の列車は名寄を出てからずっと北上していくが、音威子府(おといねっぷ)で西に90度進行方向を変える。そのあと少しして着くのが筬島(おさしま)駅だ。さらに西に向かったあと、佐久駅付近でまた90度曲がり、再び北に向かう。

(地図:国土地理院)

音威子府駅から佐久駅の区間は渓谷になっていて、そこを流れる天塩川(てしおがわ)に沿うように、宗谷本線も国道40号も通っている。このため、音威子府駅と佐久駅の間はほとんど人家がなく、かろうじて筬島駅周辺にあるだけなのだ。

 

基本情報

□駅名  筬島(おさしま)
□路線  JR北海道 宗谷本線
□所在地 北海道音威子府村
□マップ

□撮影年月 2025年9月

 

この区間の天塩川流域はなかなかいい眺めで、国道40号を走るクルマからは(運転者以外)堪能できる。しかし、宗谷本線の列車からは、草木が邪魔をしてあまりよく見えないのが残念だ。

音威子府から国道40号を西に向かい、「エコミュージアムおさしまセンター “アトリエ3モア”(砂澤ビッキ記念館)」という案内板のあるT字路を右折。筬島大橋で天塩川を渡ると小さな集落(物満内、ものまない)に入り、筬島駅に着く。

駅舎(車体)を覆う金属の波板は落ち着いた茶色で、風景に溶け込んでいる
室内はミントアイスのような水色だ。正面右のドアには「トイレの使用はできません」という札が貼られている
宗谷本線のほかのダルマ駅4駅に比べると、室内に物が少ない。壁面にあるのは定型的な掲示物がほとんどで、写真や絵がなく、簡素な感じだが、きれいに掃除はされている
列車は下り稚内行き、上り名寄行きとも1日3本

 

音威子府村には、筬島(おさしま)、音威子府(おといねっぷ)、咲来(さっくる)、天塩川温泉(てしおがわおんせん)という4つの駅があるが、音威子府以外は「廃止検討駅」となり、音威子府村の「自治体管理」に移行している。この費用負担を軽減するために、村では「みんなの駅」プロジェクトという名称で駅の存続を目指し、ふるさと納税を利用して取り組んでいる。2023年にはふるさと納税による寄付を使って、天塩川温泉駅の待合室を修繕したという。

このプロジェクトは「宗谷本線の「駅」は、私たち村民だけのものではありません」とうたっている。確かに鉄道の維持は誰がどのようにやっていくべきなのかは、現状以外の方法ももっと議論・検討していくべきだろう。

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筬島駅から佐久駅までの区間は、蛇行する天塩川に沿ってカーブを繰り返す。並行する国道40号も同様のため、落石や崩壊の事故、交通事故が多くなっている。このため、渓谷を回避するバイパス「音中道路」が建設中で、2025年度中に開通する予定だ。

筬島駅のすぐ近くには、国道からの分岐点の案内板に書かれていた「エコミュージアムおさしまセンター “アトリエ3モア”(砂澤ビッキ記念館)」(冬期は閉館)もある。音中道路が開通すると、多少寄り道になってしまうが、ここと筬島駅をセットで見にいくのもいいと思う。

展示されている砂澤ビッキの作品

 

※「ダルマ駅」とは、使わなくなった貨車(有蓋車、冷蔵車、車掌車など)を改造した駅舎の呼び名の一つ。車輪や連結器などを取り外し車体だけになった様子が、手足のない置物のだるまに似ていることが由来。

 

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